FC2ブログ
日々の生活、サイト更新、趣味愚痴その他をつらつらと。
「だからぁ…ゴメン、て、言ってるでしょ?」幾度となく謝罪の言葉を口にしたケド、リョウはずっと不機嫌なまま。言葉もなく、ぷぅとむくれて、後ろの私を返るコトもしないで、黙々と前を歩いて行った。

コトの起こりは、依頼を終えての帰り道。緩やかな山道の途中で、あろうことか車がエンスト。ウンともスンとも言うコトを聞かず、さすがのリョウでもお手上げ状態。CHの名に恥じるコトとはいえ、これじゃぁ致し方なしとJAFに連絡するものの、不運というのは重なるモノで。あいにくとすべての車両が出払ってて、代車の用意も出来ないとのコト。「それじゃぁコイツはココに放ったらかしか?俺たちゃ、どーすりゃいいんだ」とリョウが詰め寄れば、携帯電話からか細い声が漏れ聞こえ。「あのぉ…そこから山道下ったトコロに事務所があるので、こちらで鍵をお預かりします。また、少し先に在来線の駅があるので、そこからお帰り下さい。交通費はおって御自宅まで納車する際、お支払いいたしますので…」これ以上、何を言ったって始まらず、ココでどうこうしたって何等始まるワケもなく。「…ちっ…」と、忌ま忌ましげに舌打ちしたリョウが、面倒くさげにハザードを立てて。何やらブツブツと悪態つきながら、バタンとドアを閉めてロックして。「しょうがね
ぇ…行くぞ」と、有無を言わさず前を歩き出した。

「ちょっ…待ってよ、リョウっ!!」先日の仕事中、かなり奮起してくれたミニは修理に出してて、今日の足は私の愛車フィアット。どんな車だって乗りこなせるリョウだけど、やはりミニへの思いはひとしおらしく。久々に遠出したフィアットが山中でエンストなんて起こしたモンだから、口にこそ出さないケド、かなり不機嫌…おかんむり状態。それもこれも、日頃の私の管理不行き届きってコトになるワケで、どうにも弁明の余地は無し。「あのぉ…エンストしちゃってゴメンね?」「…」「車のメンテ、してなかったワケじゃないのよ?ただほら…このトコロ、珍しく依頼が立て込んだじゃない?それで慌ただしかったっていうか、そのぉ…」「……」「…ごめんなさい」いくら言葉を重ねたトコロで、立て板に水…いやこの場合、種馬の耳に念仏。とにかくどう言葉をつくしたトコロで、だんまり無口なコトにはかわりなく。こちらとしては、その鉄壁を誇る大きな背中に、ただただ謝るだけだった。

「…リョウ?ホントに悪かったと思ってる…反省してマス」「…もういいよ」それまでこだまのひとつも返ってこなかった背中から、ふいに言葉が返ってきて。空耳かとばかりに視線をあげれば、決まり悪そうなリョウの苦笑いとぶつかった。「俺も大人げなかったよ。お前に腹を立ててたワケじゃないんだ。今回の依頼がどうも…な」「あぁ、三千代さんのコト…」「…ん」今回の依頼は、金貸しだった亡父が借金のカタに取り上げた"あるモノ"を、元の持ち主に返して欲しいというコトだった。元の持ち主は、依頼人たる三千代さんの元婚約者。当の質草は、贈られるハズだった婚約指輪となれば…裏に隠された内情は、かなり込み入ったモノ。それに指輪の持ち主だった、三千代さんのかつての婚約者はすでに病死。三千代さんも病魔に侵され、あと少しの命と聞かされたら…今回の依頼、何とも言えない、重苦しさばかりが残ってしまった。

「三千代さん、持ち主に返す…なんて言ってたケド、本当は最期に一目、会っておきたかったんだろうね」足元に転がる小石を蹴りあげれば、我先にところころ転がり落ちていく。それはまるで、先程三千代さんの頬を伝った涙のようだった。「…だな。それが男も死んじまってたってんじゃ…やり切れねぇだろ」「"仕方のないコトです、気にしないで"…って、無理して笑ってたケド。本当は辛かったろうね」「…」もうこれ以上は何も言いたくないとばかりに、リョウがぶるりと首を振った時、緩やかに続いていた山道が終わり、町の中央へと続くメイン道路が見えてきた。
スポンサーサイト




【2010/03/16 22:38】 | 未分類
|
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可