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「さて…と、これでやっとウチまで帰れるってか。…ったく、後々まで面倒臭ぇ依頼だったぜ」JAFの事務所で所定の手続きを済ませて車のキィを預け、折よくホームに滑り込んできた電車に乗り込めば。がらんと空いた車両のボックス席にどかんと腰を下ろしたリョウが、ふぅとため息をつきながら、対面するシートに足を伸ばした。「ちょっ…リョウ!お行儀悪いわよ!!」「誰も乗ってねぇんだ。それくらい、イイだろ?」確かにオフシーズンの片田舎のせいか、人っこ一人いないケド。でも…。「今更グダグダ言うなよ。お前だって疲れてんだろ?新宿までかなりあるし、このままじゃ、ケツが痛くなっちまう」言うだけ言い放ったリョウは、好みの角度を得たとたん、気持ちよさそうに大きく伸びをした。「…ほら…お前も。起きてたってしかたないだろ?遠慮せずに寝ちまえって」まるで自分の家のように寛ぐリョウを、どうかとも思うケド。それでも、普段歩き慣れない山道に、常とは違う筋肉が使われたのか、どことなく身体が重くって。それでもリ
ョウみたいに傍若無人には振る舞えなくて、失礼して"うーん"と大きく伸びをして、リョウの横にすとんと滑り込み。やがて訪れた睡魔に、ゆっくりとその指導権を明け渡した。

何度目かの駅を出発した際、カーブがきつかったのか、思いの外大きな音がして、ふと目が覚めた。「…ん…ココ…?」乗り慣れない電車に、思わず"ココはドコ?"状態。ぐるりと周囲を見回すけど、小さなビルがある他は、民家と木々ばかり続く車窓では、現在地を確認する術は何等見当たらなくて。しばしキョロキョロしてる私の頭が、ふいに大きな手によってがっしりとホールドされた。「…まだ先ゃ長いぜ。も少し寝とけ」普段眠りが浅いせいか、リョウは一応、ココがどのあたりかは把握してるみたい。「でも…」と言葉を紡ぐけど、"いいから、いいから"と、まるで子供を宥めるように私の頭を抱え込み、その厚い胸板に押し付けた。すっかりリョウの懐に包まれてしまったケド、その温もりが心地よくてホッと肩の力が抜けていった。

…でも…三千代さん、気丈な人だったな。形見になっちゃったケド、あの指輪は、彼との強い絆を確認する確かな縁(よすが)として。三千代さんがその生をまっとうするまで、彼の代わりに、ちゃんと傍にいてくれるんだろうな。そう考えたら…何だかちょっぴり、羨ましい。リョウと私も、そんな固い何かで結ばれてる…?これから先、ずっとずっと、一緒だという証…。そんな確かなモノは無いけれど、リョウを想う気持ちだけは、ずっとずっと変わらない。リョウが私の前を歩いてる限り、私の進む道の先にいる限り。私はずっと追い続けてくんだわ。

目には見えない長い長いレールが、ずっとずっと続いてる。まだまだ先は遠くって、何も見えはしないのだけど。その先がリョウへと続いてるのなら…たとえ石ころだらけの道だとしても、ひどく険しい道のりだとしても。私はそのレールに従って、転んでも何をしてでも歩き続けてくから…。だから…リョウ?それ以上、遠くにいったりしないでね…?

せめて今、どのあたりにいるのかくらいは確かめたかったケド、依頼が片付いた安堵感と、山道を下った疲労感には勝てなくて。がたんごとんと規則的な音と振動の中、すぅとリョウの匂いを胸いっぱい吸い込めば、とたんに訪れる心地よいけだるさ。リョウの傍なら、何も怖くないと瞳を閉じて、とろとろと再び襲い掛かってきた睡魔に、ゆっくりと身を任せた。
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【2010/03/16 22:39】 | 未分類
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