FC2ブログ
日々の生活、サイト更新、趣味愚痴その他をつらつらと。
俺としたコトが、ポーカーフェイスもままならなくなっちまったか、と、苦笑しながら歌舞伎町方面へと足を向ければ。いつもの行きつけ、ねこまんまのサラダちゃんが裏口の掃き掃除をしてた。「あら、リョウちゃん。またナンパ?でも、今日はさすがに早く帰らないとマズイんじゃない?」「んぁ?」「だって今日は、リョウちゃんの誕生日なんでしょ?こないだ嬉しそうにTAKAGIから出て来る香ちゃんをを見たわよ?」

TAKAGIってのは、ココいらじゃ老舗の喫煙具店で、珍しい舶来品や、かなり値の張るアンティークの1点モノを取り扱ってる店だった。そういやいつだか、香と街を歩いてた時、あそこのショーウインドウに、なかなかイカしたジッポーが飾られてて、しばし目を奪われてたコトがあったっけ。べらぼうな値段とは言わないが、まぁその品に見合う、"それなり"の値段だったと記憶してる。確かに香なら、俺が気にかけてたジッポーをプレゼントしようと考えるだろうが…せちがらい世の中の今、冴羽家の家計にゃ、かなりの痛手なんじゃねぇか?

「小さな紙袋を大事そうに抱えてたわ。もちろん香ちゃんはタバコ吸わないし…あれ、間違いなくリョウちゃんへのプレゼントよv」「へぇ…」「今日は歌舞伎町中に戒厳令が出てるから、ドコ行ったってリョウちゃん、追い返されるわよ。私たち、もちろんリョウちゃんも好きだケド、香ちゃん泣かすリョウちゃんは許さないんだから。今日はお家で、おとなしく祝われてちょーだい?」くすりと笑うその頬に、可愛いえくぼが見え隠れ。こんな気配りが出来るトコロも、彼女の人気のひとつなんだろう。「いーい?わかった?」「へぃへぃ…」
その後も肉屋の前で、気のいい店主夫妻にとっ捕まって。「今日はご馳走なんだから、早いトコ帰りなよ、リョウちゃん」「やだアンタ、何言ってんだろうね、この人は。リョウちゃんには内緒だって、言っただろ?」「あっ!いけね」頭をかきつつ店主がこっそり耳打ちした話によれば、店でも最上級のステーキ肉を買ってったんだと。「そん時の笑顔といったら…なぁ?あんなべっぴんに惚れられるなんざ、男冥利につきるってぇモンだ。な、リョウちゃん♪」べしべしと肩を叩かれ、にやり、と、男にしかわからない笑みを向けられ、表にこそ出さないが、同意半分。あとの残りは、平気でそんな笑顔を振り撒く香の無防備さへのため息となった。

そんな感じで、リカショップではウ゛ィンテージワインを買っただの、果物屋ではケーキの飾り付け用フルーツを買っただの、と。口が軽いというか、人がいいというのか。街のヤツらは、ここんトコの香の行動をあますトコロなく教えてくれた。帰りに寄った美樹ちゃんトコでさえ、「冴羽さん?今日は私のおごりだケド。お願いだから、そのコーヒー飲んだら、ちゃんと家に帰ってね?」と、釘を刺されたり。美樹ちゃんまで…と、肩を竦めた俺に、横からタコがチャチャを入れる。「フ…ン。ナンパしようにも、今日という今日はおとなしく帰るしかないだろう。何たってこの新宿中、みんな香の味方だからな」目が見えないクセに偉そうに腕組みし、ニヤリと笑いながら鼻を鳴らす様が、憎ったらしいったら、ありゃしねぇ。

「…はんっ!!香が怖くて、新宿で生きてけるかってーの。誰が何と言おうと、俺は今日は街で飲み明かすぜっ!!」売り言葉に買い言葉。呆れる美樹ちゃんをヨソに、タコを相手に口が勝手にモノを言い。今更それを訂正するコトも出来ず、「フン!!」と、こちらも鼻息荒く踏ん反り返り。あまりに胸クソ悪く、居心地悪く。そのままカウベルをガラガラと勢いよく鳴らして表へ出れば、その向こうから聞こえてくる忍び笑い。くっそぉ~っ!!みんなして俺を笑いやがって!!まるで俺が、香の尻に敷かれてるみたいじゃねぇか。断じてそんなコトはない、と、胸を張って言いたいのに。これで万が一、俺がその計画を無視して朝帰りをすれば、香が泣くのは決定的。その明るく大きな茶色の瞳を伏せ、まぁるいカーブを描くやわらかな頬を涙が伝う様を想像して…ちくりと胸が痛んだ。

ねこまんまのサラダちゃんの言うとおり、それからドコの店に足を向けても「ごめんね、リョウちゃん。今日はダ~メ!!」だの、「」悪いね、リョウちゃん。また明日来とくれ」だの。そんなのはまだ可愛い方で、中には「何だいリョウちゃん、アンタまだこんなトコロで油売ってたのかい?とっとと香ちゃんトコに帰んな」と。まるで野良猫を追い払うかのように、しっしと手を振られたり。おい、こら、ちょっと待て。日頃の感謝も忘れて、俺を門前払いたぁ、いい度胸じゃねぇか。もしまたお前らが困って助けを求めて来たって、俺はもう、請けてやんねぇからなっ!!(怒)

あまりな振る舞いにカッと頭に血を昇らせるケド、ンなコトしたって、困ったヤツらを、香が見てみぬフリするハズもなくて。俺がいかに反対しようが、あいつのヒトコトで決まっちまうのは目に見えて…いや、確実だろ。そう…結局俺は、香に首ねっこ捕まえられてるんだ。惚れた弱みといやぁ照れ臭いが、ただあいつを泣かしたくないだけ。ずっとずっと、笑ってて欲しいだけ…それだけなんだ。

気付けば少し日脚の延びた夕焼け空も、次第に深い藍色に染められてきた。アパートじゃ香が、今か今かと、首を長くしてるに違いない。「しょぅがねぇ…帰るとすっか」夕食のメニューも誕生日のプレゼントもネタバレ甚だしいが、ンなモン知らぬとばかりにびっくりしてやるさ。冴羽リョウ、一世一代の名演技を見せてやる…とばかりに苦笑しながら、夕日の沈む先にあるアパートへと足どり軽く歩き出した。
スポンサーサイト




【2010/03/26 10:29】 | 未分類
|
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:

Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可