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「…行ってあげて」「冴…」期待が大きかっただけに、多くを語れば涙がこぼれそうで。すべてを言われる前に、言葉を重ねて打ち消した。「大丈夫。私なら大丈夫だから。だから…帰ってあげて?」心を隠した微笑みは、私の悪いクセ。無理するコトはないのに、素直に言えばいいのに。自分を隠し、その場を取り繕うために、精一杯の笑みを浮かべる。誰に学んだワケじゃない。長女に生まれ、周囲の期待に応えるべく。生きていくのに必要だった身を守る術。それを今、何もこの人の前で使わなくたっていいのにね…。

「…すまん」心から申し訳なさそうに、頭を下げる。嘘偽りなどない、心からの言葉。こんな人だから、好きになったのに。こんなにも好きになった人なのに。私はこの人の一番にはなれないの。「今度、必ず埋め合わせする。何かリクエスト、考えといてくれ」そんな気遣いなんかいらないから、今日はずっと傍にいて…?思わず口に出そうになった本音を押し止めて、また偽りの仮面を深く被る。「いいから、ほら…早く帰ってあげなさい」「…」笑顔で送り出そうとする私を、眼鏡の奥の瞳がじっと見つめる。静かなそれは、けれど何かを探ろうとしている色で。それに負けてしまわないように、その視線から逃れるように。よれたコートの肩をくるりと返し、猫背の背中をぽんと押せば。思いがけず背を押されたかたちとなった槇村が、そのまま数歩、よろけて行った。

「…じゃぁね」最後の砦となる笑顔の仮面を顔いっぱいに貼付けて、手を振れば。ついと振り返り、意外にも骨張った無骨な指を伸ばして私の髪をそっと掬い上げる。頬に耳に、今しも触れそうな指先に、思わずぴくりと身体か震えた。「桜…」「…え?」「ほら…花びらがついてた」くすりと笑いながら、つまみあげたそれは、先程から風に吹かれてた桜の花びらの一枚で。「あ…」目の前に持ってこられたそれに、私は思わず、水を掬うように両手をお椀型にして。そこへ槇村が、そっとそれを乗せた。

「花冠…とまではいかないが、似合ってたぜ?」ヨソの男が言えば、そのクサさに呆れる程のセリフだけど。槇村ほどお世辞の下手な人はいないし、そのはにかんだような照れ臭げな表情(かお)からして、嘘偽りなく言ってるのがわかる。「…ありがとう」受け取ったそれを捨てるのも忍びなくて、両手の中にぎゅっと閉じ込めれば。「じゃぁ、今度…な」と言って、慌てたように走り去る。その急ぎ方がまた癪に触ったケド、両手の中に残る花びらに視線を落として、ふっと微笑んだ。
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【2010/04/14 17:20】 | 未分類
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