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ふと思い立って出掛けたドライブの、サービスエリア。休憩のために立ち寄ったトイレから出れば、周囲の女の子が妙に色めき立ってざわめいていた。「ねぇ、ちょっと。あの人かっこよくない?」「うわ、ホント。声かけてみようか」…。嫌な予感がしながら彼女たちの視線をたどれば、案の定、壁に背を預けながら、対面の渋滞案内に目を走らせているリョウがいた。無駄に長い脚を、足首のあたりで物憂げに組み、ゆっくりと煙草を燻らす指先が妙に色っぽい。肉厚でいながらととのった口元は、何だかよからぬ想像をかきたてるには、充分で。本人にその気はなくとも、フェロモンだだもれのような姿は、いい加減、どうにかして欲しかった。

それでなくても、リョウに惹かれる依頼人たちに気をもむのは、日常茶飯事だってのに。新宿を離れ、こんなトコまで来て、またこの気苦労なんて、やってらんない。…と、思う心とは裏腹に、リョウを見留める彼女たちに、やる瀬ない嫉妬心が沸いて来る。まったく…そのいらいらの原因の大元たるリョウ本人が、まったくの無自覚だっていうから、余計にたちが悪いのよね。

きゃいきゃいと手鏡を手に、やおらリップを塗り直す女の子たち。そのくすくす笑いを向けられてるのが、見知った男であるというだけで、どうしてこんなに苛立つのだろう。…むか。逸る気持ちを抑えられず、彼女たちに聞こえるよう、わざと明るく大きな声でリョウに近づいて行った。「ごめーん、リョウ。待った?」「…遅ぇよ。しょんべんすんのに、何、そんな時間かかんだ」「…ったく、デリカシーないんだから…って、ん?リョウ、寒い?」見れば少しばかり、顔色が悪いような。それとも光線のせい?「山の方来たせいか、空気が冷えてるもんね。ほら、ストール貸してあげるから、しっかり巻いて!!」と言って、襟元に巻いていたストールを引き抜き、リョウの首に巻き付ける。やだ、何だか恋人同士みたいで、照れちゃうな///彼女たちを牽制するのが目的だったのに、慣れない行為に頬が熱を帯びてくる。

「ばぁ~か。お前とは鍛え方が違うの。お前こそ、冷えて風邪でもひいてみろ。俺は看病しないからな?」ぶつくさと文句を言いながら、せっかく巻き付けたストールをしゅるりと勢いよく引き抜いて。そのままキュッキュと私の襟元に結びつけ。「…ん。これ持っとけ」と、ジャケットのポケットから取り出されたものを握らされた。「…あったかい…」手渡された缶コーヒーはリョウのポケットの中で熱を持ち、冷えた身体にはさらに心地よい熱さになっていた。「…ありがと///」「…おぅ。さて、とっとと行くぞ」「うんっ」

ちらりと視線の端に捕らえた彼女たちからは、羨望と感嘆の眼差しが見てとれて。らしくもなく、思わずくすりと勝利の笑みをもらす。「…んぁ?どうかしたか?」「ううん、なんでもない。さ、早く行こう?」訳がわからずと肩をすくめ、駐車してあるミニへと向かうその背を追って。太く逞しい腕に自分のそれを絡めた。
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【2014/06/24 22:44】 | 未分類
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